センチメンタルな27歳

フィリピンに初めて来て、驚くことばかり。
セブ島に行く途中マニラで飛行機を乗り換えたんだけど、その時行きたいゲートについて空港職員さんについて聞いた。彼は笑顔で優しくその場所まで案内してくれたんだけど、着いた途端「お金くれる?」って笑顔で聞いてきた。まぁあわよくば的な人で悪い人ではないからよかったけど、とりあえず「無理。でもありがとう」と言っといた。
セブに着いたら着いたで「コンバンハー!ワイファイ!ワイファイ!」って空港内で叫ぶWi-Fiの契約を勧めてくる人達、ペソが欲しくて換金所に行くと「ここで換金しな!」とすごい目で見てくるおばさん。そのあと、空港近くを歩いているだけでみんなからなめまわされるように下から上まで見られているのに気づいた。正直、第一印象はちょっと不気味だった。ただ、空港に来てくれた学校のスタッフの人達は、信じられないくらいいい人達だった。

着いた当日は学校がなかったし夜だったから、そのまま家に直行してルームメイトに学校や家について色々と聞いたり、フィリピンについて話してた。彼は偶然にも名古屋の大学生。オススメの観光スポット、学校の授業について、どこにスーパーやコンビニがあるか等々教えてくれた。晩御飯も近場のフィリピン料理を食べに行った。なんか彼は一見シャイでボソボソ喋るし動きも単調な人なんだけれど、いきなり「フィリピンのクラブの前で女の子が買えますよ。1000ペソで。」とか言い出して驚いた。「実際そういうことあるんだねー俺も試してみようかな」と冗談で言ったら「なかなか良かったですよ」とニヤニヤ笑ってた。

学校の初日、トライアルの授業があって実際に先生たちとマンツーマンで話した。とりあえずフリートークだけの日だったから色々とたわいもない話をした。ただ、思いの外俺が英語を話せるのに気づいた先生達は俺に個人的な質問をしたり日本について話してくる。「日本人はお金持ちでいいよね」「私たちは苦労してもほとんどお金がもらえない」「日本人はお金があるけど家族をあまり顧みないでしょ?フィリピンはお金がなくても家族を大事にするよ」「日本人はフィリピンでなんでも買えるでしょ?物も、女の子も。」とか。正直ムッとしたけどとりあえず「まぁ人それぞれだよ。みんながそうじゃないよ」と流しておいた。そう言われるのに対してちょっと嫌悪感を抱いてしまって、何だよこいつらって正直思ってしまった。

そんな気持ちを抱えつつ家に帰って、色々と考え事をしてた。彼らの感情はお金を持っている日本人に対する嫉妬心なのか、それが日本人を人間として下に見る要素の1つになっているのかなぁとか。だって、話を聞いてて日本が好きな反面で俺らに対する嫉妬というか見下す姿勢のようなものが感じられたから。お金がないってことは、人をこうさせてしまうのかな、とか。でもその時ふと思い出したのが、ルームメイトが話していた「女の子が1000ペソで買える」という話。
彼女たちは生活費を稼ぐために体を売っているけど、それをお金を持っている日本人は「カフェでコーヒーとケーキ買う位」の感じでニヤニヤしながら彼女たちを買っているかもしれないのだ。日本人だって、フィリピンの人達を見下している部分が少なからずあるのだ。それがあくまで一部の日本人であったとしても。とはいえ、俺はセブの街を歩く時カバンを自分の体の前に置いているし、そういう目で少なからず周りを見ている。もちろん自分のものを守るためでもあるけど、実際そういう先入観を持ってフィリピンの人達を見ているのだ。
オーストラリアで同僚だったフィリピン人も、言われてみればそうだった。彼らはいつも日本人はお金持ちだって口癖のように言っていたし、その時の妬みのような発言や日本人を軽蔑するような発言があまり好きではなかった。彼らとは仲が良かったとはいえ、根底で少し嫌な気持ちを持ったこともあった。でも、実際ここにきてみて、そういうことなのかなぁと思った。

今日はリーディングの授業があった。トピックスは「様々な生き方をしている人達」例えば、会社の社長や政治家のようにお金があってなんでも手に入る人達、宗教を信じてお坊さんや神父さんになって欲を抑える人達、自分たちのように一般的に生きる人達、どれが一番幸せか、というもの。そこで先生に「あなたはどれが幸せだと思う?あなたは今幸せ?」と聞かれた。俺はすぐに答えられずに「わかりません。」「きっと、たぶん幸せなんだと思います。」と答えた。先生は驚いたようで「あなたちょっと変だね。幸せじゃないの?」と聞いてきた。俺は「先生は幸せですか?」と聞くと「幸せだよ。お金がなくても別に幸せ。」と答えた。それが日本人に対する皮肉なのか素直な答えかはちょっとわからなかったけど、俺はその後何も言わなかった。
そして最後のクラスは向こうの手違いで、変なおじさん先生が来た。その先生は仮の先生のようで「おし、今日はスピーキングの練習しよう。話そうよ、なんか。」といってきた。俺はどちらかというと文法とかの勉強がしたかったから「いや、文法でお願いします」と伝えた。するとそのおじさん先生は「君、これが今日最後のクラス?俺もだよ。だから早く家に帰りたいんだよなぁ。もう疲れた」とめちゃくちゃやる気ない事を言いはじめる。俺は引き下がらずに「文法で。」と伝えると「わかったよー。じゃあ文法終わったら話そうねー」と言ってきたので、とりあえず文法の授業開始。
やることが終わると「じゃスピーキングしよー」と切り出してきた。めちゃくちゃフィリピンアクセントが強いのと、おじさんだからかあんまりろれつが回ってない。スピーキングの内容も「私の名前は〜」「出身は〜」とかそんな基礎中の基礎ばかりだから若干イライラして、明日から学校にいって先生変えてもらおうかと名前を控えた。が、しかし、彼が自己紹介と世間話を終えるとなんだかちょっと難しい話をし始めた。
それはフィリピンについて。「ストリートチルドレンにお金をあげるな、彼らはご飯じゃなくて薬や酒を買う。何かあげたいならご飯を買ってやれ。」「君は介護士か?フィリピンでの介護はひどいもんだ、認知症の高齢者を縛りつけたり、手を出したりする。裸で床で寝ていたり、ベットで排泄物があっても看護師は見て見ぬ振りをすることもある。」「ここから北と南のエリアへは行くな、左翼の過激派団体かいる。彼らは人を殺めたりもする」「ここからかなり南の島に行くとあいつら(世界的に有名な危ない団体)がいる、絶対に近づくな。特に君は日本人だから」「警察の連中はあてにならない、金を渡せば話は別だけどな」なんていう話。どうやら彼は大学で社会や政治的なことについて勉強していたらしく、英語で難しい単語を俺に説明しつつ、いろいろなことを話してくれた。授業が終わったら速攻帰ったけど、明日も彼のクラスをとってみようと思った。

とりあえず、なんだか頭を色々なことがぐるぐると回っていて、帰り道歩きながら周りを見渡した。俺は本当に違う国にいて、同じようで違う人たちや文化がここにあるんだなぁと。そして、どこにでも傷ついたり、傷つけたり、妬んだり、見下したり、欲にまみれたりそんなことがあるんだなぁと。そんなことを考えていたら、見たくないものから目を背けて生きている方が楽だなぁと正直思った。なんだか日本では表面的に見なくて済むものを、この街で直視しているような気がした(フィリピンの方に失礼かもしれないけど)。とりあえず、おじさん先生の話を聞いた後から、すごく胸が痛んだ。自分の中にはいつも見たくないものを見ないようにして裕福かつ健康に暮らしていることに対する罪悪感があるのかもしれない。わからないけど、いろんなニュースを日本で見ていた時も、いちいち考え込んでしまう。とりあえず面倒くさい性格だなぁと思う。

そして「幸せだ」と即答できなかった自分に、なんだかがっかりした1日でした。

とりあえず、勉強しないと!